Story01
土木の力で、
新潟の農業を支える河井地区区画整理工事
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建設本部 土木部
加藤 寛
Kato Hiroshi
※役職・内容は2020年12月取材当時のものです。
新潟の基幹産業、農業の発展のために
新潟では、今、基幹産業である農業が大きな課題に直面しています。人口減少、少子高齢化によって農業の後継者不足が深刻になっているのです。その解決のため、農地の区画整理を進めて作業効率を上げる圃場整備が行われています。今回私が担当しているのもその一つ、新潟市の南西部(旧巻町)河井地区での区画整理事業です。小型の水田を統合して大型化、面積の均一化を図り、同時に農業機械がスムースに通行できるよう農道の拡幅や整備を行い、若い担い手にとって魅力的な作業環境とするための工事です。河井地区100haを数区に分けて、順次進めていく計画です。
また、コンクリート製の水路が経年劣化したため、塩ビ管を地中に通す方式に切り替えます。取水桝から高低差を利用して自然圧で水を配分し、それぞれの田では蛇口の開閉で水量のコントロールができるようにします。水の管理を簡単にして、ここでも作業効率向上を図ります。
交通や暮らしを守る、対策と配慮を徹底
この工事の最大の難題は、交通を制することでした。工事区域には2本の幹線道路が東西に走っています。1本は、北陸自動車道巻東インターと国道116号を結ぶ幹線道路で交通量が多いため、工事車両用に仮設の待機所を設置して渋滞を引き起こさないようにしました。もう1本は中学校の通学路に指定されている市道で、自転車通学の生徒が多く利用しているため、安全を第一に考え、登下校時には工事車両は通行禁止に。安全のための注意喚起に加え、工事への理解を深めてもらおうと、中学校に毎月、作業内容や工事の進捗状況を知らせました。また、授業の一環として中学生を招いて現場見学を実施しましたが、土木という仕事、さらに農業について考えるきっかけになったのではないかと思っています。
また、工事現場は集落に接しているので、振動や騒音に十分に配慮しました。同じ作業でも機器や工法を変え、たとえば、家屋に近いエリアでの整地作業では小型機器を使用し、杭を打つ際には打ち込み方式ではなく、振動のない鋼管の回転圧入工法を採用するなどの対策を取りました。
農家の情熱と期待に応え、圃場整備に邁進
田畑は先祖から代々受け継がれた大切な財産です。公共的な目的のためとはいえ、大切な個人の財産を預かっての工事ですから、事前の住民説明会を始め、進捗の周知、日々の細やかなコミュニケーションを重ねて、お互いに理解を深めていけるように努めてきました。話し合う中で、地元の方々とのつながりが生まれ、また、農家の情熱やプライドに触れることもあり、多くの方々の思いや期待に応えなければ、と思いを新たにしました。
土木とは、図面に描かれたものが、まず自分の頭の中でイメージとなり、そして多くの技術者の力を得て、実際の形になっていくものです。完成後の達成感は大きく、イメージ以上の出来映えになるとうれしさは倍加します。今回の工事区域は水田ですから、引き渡し後に水が引き入れられて田植えが行われるのですが、秋の実りの風景が楽しみです。河井地区の工事を通し、新潟にとっての圃場整備の重要性を改めて実感することができました。