Project
Story03

課題を克服し、
村上産の杉で小学校を建築村上市 山辺里小学校建設工事

  • 建設本部 建築部
    奥吉 守己
    Okuyoshi Morimi

※役職・内容は2020年12月取材当時のものです。

木の香りとぬくもりに包まれる小学校

村上市立山辺里小学校と門前谷小学校が統合し、2010年、新生・山辺里小学校が開校しました。RC3階建ての校舎に瓦を組み合わせた外観、ふんだんに杉材を使った内観とも、和の雰囲気が感じられる個性的な建築物です。延べ床面積6,550㎡の新築施工を当社が特定共同企業体の代表会社として手掛け、私は作業所長と監理技術者を兼任し、2008年から約2年間に渡ったプロジェクトに関わりました。

新潟県の最北端に位置し、豊かな自然に恵まれた村上市。山地には杉林が広がり、その「地元産の杉を使おう」というコンセプトから計画された事業であり、床や柱、扉、ルーバーなど様々な場所にふんだんに杉が適用されることになりました。杉は芳香があり、まっすぐに割れやすい性質、柔らかな質感を持つため、古くから樽、桝、製材などに用いられてきた、日本人にとって身近な木材です。が、建築に用いるには、実は大きな問題がありました。

品質へのこだわりを貫き、強度も確保

杉材は加工しやすい反面、硬度や強度が足りずフローリングには適さない材料なのです。無垢のまま使うのでは、傷や変形により3年に1度の削り直しが必要となり、ライフサイクルコストが問題になります。そこで、小学校用途に適した強度や耐摩耗性、耐久性、耐水性を確保する必要があると判断し、全国に加工技術を照会。接着剤を使用せず、熱盤圧密化技術で杉の間伐材を良質のフローリング材に加工する愛知県のメーカーを発見しました。

次の課題は量の確保でした。杉は伐採、製材、乾燥に6カ月、愛知県での加工と運搬に6カ月、つまり、施工まで1年が必要です。が、工事に必要な2,900㎡分の杉材は一度には調達できず、村上市森林組合の協力を得て、随時送っては加工を進め、届いた材料でできるところから施工を行いました。加工後の木材でも、節が目立つなど問題がある場合には返品し、「水倉組に頼んでよかった」と思っていただけるよう、品質へのこだわりを貫きました。

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設計図は出発点、常により良いものを目指す

2020年、開校10周年を記念して小学校が制作したビデオを見せていただきました。そこには、建築工事の過程から開校後の様子まで収められており、子どもたちや保護者、地域の方々が集まり、地域活動や文化継承の場として利用していただいていることを知りました。10年間、多くの人に使われ、愛されている建築物を提供できたことは何よりの喜びです。多目的使用もできるランチルームには、円筒形の柱をシンボルツリーのように配置しましたが、そのデザインや施工方法を考えあぐねた時間を懐かしく思い出しました。

私たちが最初に手にする設計図は、まだ未完のもの。それを元に、もっといいものはできないか、うまく収められないか、改善の余地はないかを考え、施工計画を練り、作業員に伝えて形にする。そして、クライアントに最高のものを引き渡す――それが私たちの役割です。これからもその姿勢を守り、地域の役に立ち、地域に愛される建築物を造っていきたいと思います。

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